失踪を希望する理由1 ~仕事~
大学を出て、社会人として数年働いて。
「私はこんな生活をするために生きてきたのだろうか」
そう思う日々が続いている。
趣味がある。やりたいことがある。行きたい場所がある。
子どものころから夢見てきたもの。
「お金持ちになりたい!」「超有名タレントになりたい」とか、そんな大したことではない。
昔テレビで見て、行ってみたいなぁと思った場所。食べたいなぁと思ったもの。
おとなになればできると思っていたそんな些細なことさえできないのだ。
早朝に起き、出勤。12時間働いて、45分かけて帰宅。
食事と風呂を済ませれば、1時間ほどだけ自由な時間を過ごせる。
ただし、睡魔と闘いながらだ。
休日は月8日。盆休み、祝日等はない。
連休もよほどの理由がないととれない。
体力に自信のない私にとって、そのとびとびでやってくる休日は正真正銘の「休」日だ。
なぜこんなに休みが少なく、労働時間も長い。
しかも、立ったり歩いたり重いものを持ったりし続けるような仕事についてしまったのか。
それは、私が「失踪」などということを考えている人間であることを考えれば、察していただけるだろうか。
私のような人間には、選べるほど良い仕事がなかったのだ。
辞めたいと上司に言ったこともあるが、うまく言いくるめられて残留してしまった。
「私はこうしたい!」と強く押し切ることができない性格なのだろう。
――逃げるしかない。
私は、そう思った。