失踪を希望する理由2 ~家庭~
早めにこちらも書いておくべきだと思っていたものの、時間が空いてしまった。
私は実家暮らしだが、家族とともにいるのがひどく苦痛だ。
両親は表向きは良いものの、ひどい不仲。
父は母がいる時でも、面と向かって母の悪口を言い、
私や弟が何か気に入らないことをすれば、「そう言う嫌なとこと母ちゃんに似たな」と厭味ったらしく言う。
母も父がいないところで父の悪口を言い、同時に死にたいと言う。
いっそのこと、離婚してくれれば私は勝手に好きな場所へ出て行くのだが、世間体を気にする人々なので、それもない。
暴力はないものの、ギスギスした空間で共に食事をとったり、団らんさせられたりするのは、仕事で疲弊した私にはひどい苦痛になる。
特に父方の家族は世間体を重視する人だ。
祖父母にとって、私は近所の人喉の孫よりも優秀で賢い人間でなくてはならないらしい。
私は姉弟の中でもいとこを含めても、最年長だ。
初孫である私に祖父母は過度な期待をした。
多少言語に障害がある気がするものの、残念なことに私にはそれに答えられる能力があった。
物覚えが良く、頭もいい。運動もできた。
徒競走では1位になることが多く、クラス対抗リレーの代表にも毎回選ばれた。
作文や工作で良く賞をとっていたし、学校の成績も良かった。
そうでなくてはならなかったのだ。
みんなが喜んでくれるからと、地域で一番良い高校へ行き、地元の国立大学に合格した。
みんなに喜んでもらいたいから。
しかし、私は大学進学の際に気づいてしまったのだ。
私が良い成績を出して喜ぶのは、それが周りの人に自慢できるからだ。自分の孫はこんなに優秀なんだと言って、他の人がうらやましがるのを楽しんでいるからだと。
気づいた理由は簡単。
私は地元国立大は後期入試で入ったのだが、前期入試はもっと違ういわゆる旧帝大難関大と呼ばれるところを受けた。
残念ながら、そこには落ちたのだが、それを聞いた祖母の言葉。
「そんな難しいところうけて、おちたの? 落ちるんなら何で受けたの? 自信過剰な嫌な孫を持ってるって思われるから、自慢できないじゃん!」
その時、私は彼らのアクセサリーみたいなものだったのだと気付いた。
そして、その難関大に4点足りずに落ちたと知った瞬間、
「たった4点。やっぱりあなたは頭良かったのね! 自慢だわ!!」
というてのひら返し。
私は、彼らを輝かせるために頑張ったわけではないのだが……。
孫がすごいから、自分もすごいと思っているのだろうか……。
そして極めつけは、就職時。
子ども時代にいじめられていたためか、私のコミュニケーション能力は頗る低い。
やっと受かった今の会社は、しかし、肉体労働の底辺と言えそうな職種。
「あんなにいい大学を出て、そんなアルバイトやパートみたいな場所に行ったの? 恥ずかしくて誰にも言えないわ」
私も満足の結果ではなかったが、面と向かってそう言われた瞬間、彼らが嫌いになった。
ちなみに、私の家族もみんな同じような反応をした。
辞退の電話さえ勝手にかけられそうになった。
私は、これからも彼らの世間体のために生かされるのはごめんだ。
このままでは、もう数年もしないうちに無理やり彼らの見つけてきた相手と結婚させられ、
望まぬ子どもを作り(私は子どもが欲しくない。子どもに自分のようになってもらいたくないからだ)、
実際の中身はどうであれ、外面は無難で幸せな家庭を維持し続けているように見せなくてはならないはめになるのだろう。
世間体のみで維持され続けている今の私の家族のようになりたいか?
そんなのはごめんだ。
私は、自分の好きなように生きる。
それで不幸なことになっても、自分でやった結果ならまだ満足できる。
このまま、家族を満足させるために自分の幸せを削って生き続けるなど、全力で拒否させていただく。